普天間基地使用認定取消訴訟
最終的に、111名になりました。
訴 状
2015年7月8日
那覇地方裁判所 御中
原告ら訴訟代理人
弁護士 池宮城 紀 夫
同 三 宅 俊 司
同 金 髙 望
原 告 別紙原告目録記載のとおり
〒900-0025
那覇市壺川2丁目10番5号 三宅俊司法律事務所
電 話 098-853-7309
FAX 098-832-0420(送達場所)
上記原告ら訴訟代理人
弁 護 士 三 宅 俊 司
同 池 宮 城 紀 夫
同 金 髙 望
〒100-8977
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被 告 国
代表者法務大臣 上 川 陽 子
処分行政庁 防衛大臣 中 谷 元
使用認定取消請求事件
訴訟物の価格 金1,170,624円
手数料 金 11,000円
請求の趣旨
1 被告が2015(平成27)年1月16日付けをもって別紙物件目録記載の土地についてなした使用の認定はこれを取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告らは、いずれも本件土地を共有して、一坪反戦地主会に所属している。
一坪反戦地主会は、自らの土地を軍用地に提供することを拒否し、返還を求める闘いを続けている「権利と財産を守る軍用地主会」(反戦地主会)と連帯し、軍事基地を生産と生活の場に取り戻すことを目的として、1982年12月12日に締結された軍用地共有者の組織である。
労働者、女性、宗教人、大学人、女性、ジャーナリスト、弁護士等々様々な階層、年令の人々を結集して、イデオロギーに囚われず、日本国憲法の理念に徹して、反戦平和の実現を目指して、草の根運動を展開している。
2 被告は、本件土地につ、2015年1月16日付けをもって、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(以下単に「米軍用地収用特措法」という。)第5条の規定に基づくとして、使用の認定をし、同法第7条第2項の規定によるものとして、各々告示した。
第2 米軍用地収用特措法及びこれに基づく使用認定の違憲性
1 本件土地に対する被告防衛大臣による使用認定は、以下に述べるごとく憲法に違反する無効なものであり、少なくともその取消を免れない。
(1)憲法の定める、恒久平和主義に反する米軍用地収用特措法の違憲性と、これに基づく使用認定の違憲性
① 憲法前文は、憲法の基本原則としての恒久平和主義を宣言し、その目的を達するために、第9条においてあらゆる形態の戦力の不保持と交戦権の否認を明らかにし、戦争の放棄を定めた。
この規定の意味するところは、自衛隊のごとく日本自らが戦力を保持することはもとより、米軍のごとき外国軍隊を日本国内に駐留させることをも厳禁するものである。
沖縄を含むわが国内への米軍の駐留は、わが国政府の要請と政府の手による基地の提供、費用の負担等の協力のもとでなされているのであり、米軍の駐留は、憲法第9条の禁止する陸海空軍その他の戦力の保持に当たるものである。
したがって、米軍の駐留を許した日米安保条約及び地位協定は、憲法に違反し、違憲の米軍の用に供するため、土地の強制使用を行うことを目的とする米軍用地収用特措法もまた憲法に違反するものである。
したがって、上記違憲の法律によってなされた、米軍の用に供するための本件土地の使用認定は憲法の前文および第9条に違反し許されないものである。
(2)憲法第29条に違反し、公共性を欠く使用認定であり、違憲である。
① 憲法第29法は、土地所有権等の財産権の不可侵性を宣言し(1項)、正当な補償のもとに、公共のために用いる場合にのみ、その権利の制限を許している。
米軍や自衛隊のために土地等の財産を強制使用することは、憲法が財産権の制限を許している「公共のために用いる」場合には当たらない。
公共のために用いるとは、憲法原理に沿った社会全般の福祉の擁護と増進のために、土地等の財産を供する場合をいうのであり、社会全般の福祉とは、全く無縁な、沖縄県民、さらには、国民全体のの生活に重大な被害をもたらし、沖縄県民、及び国民全般の福祉を破壊している米軍に土地を提供することが、憲法の定める公共のために用いることにあてはまらないことは明らかである。
憲法の定める「公共」とは、憲法自らの基本原則である人権の尊重、恒久平和主義などの理念を踏まえて解すべきものであり、政権担当者の恣意的な解釈によって決定できるものではなく、人権を侵し、平和を破壊する事態が「公共」性の名のもとに許されてならないことは当然である。
② 米軍の用に土地を供することを目的とする米軍用地収用特措法は、憲法第29条1項、3項にも違反した無効なものであり、したがって同法を適用してなした本件土地の使用認定もまた無効である。
第3 米軍用地収用特措法の要求する、「適正且つ合理的」の要件を欠く使用認定の違法性
1 「適正且つ合理的」要件判断に当たっては、厳格な認定を行うべき義務を負うというべきである。
(1)米軍用地収用特措法は、土地収用法の定める土地強制使用のための要件を大幅に緩和し、且つ権利者保護の手続きを大幅に切り捨てて米軍用地の強制使用を図ろうとする特別措置法である。
しかし、このことを理由として、全く無制約な土地収用使用を許すものではない。
① 米軍用地収用特措法は前述のとおり違憲無効なものであるが、その点を置くとしても、この法律の適用自体が厳正なものでなければならず、この法律の定める要件が厳格に適用されなければならない。
② 米軍用地収用特措法第3条は、「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが、適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。」と定めている。
米軍用地収用特措法による収用のためには、「駐留軍の用に供するための土地等を必要とする場合」のほかに「当該土地を米軍用地として供することが適正且つ合理的」な場合でなければならないと明記している。
米軍用地収用特措法による土地の使用認定には、前記各要件が必要なのであって、単なる「基地の必要性」「安保条約に基づく基地提供義務」と同義語でないのである。
本件土地の使用認定にあたって、防衛大臣は、国が米軍に対して基地提供義務を負っているとしても、具体的に本件土地の収用が「適正且つ合理的」であるか否かを改めて厳密に判定しなければならない法的義務を負っているものである。
③ 後述する通り、「世界一危険な軍事空港」であると、日米両政府が認める、普天間飛行場用地の維持のための土地強制使用に、「適正かつ合理的」の規準が相当しないことは、当然である。
本件使用認定手続きは、米軍用地収用特措法が定める「適正且つ合理的」の要件を欠く違法なものである。
2 米軍による土地の長期強奪の歴史的経過
(1)米軍占領下の米軍基地用地の収奪
本件土地についての強制使用を、さらに継続するための使用認定が「適正且つ合理的」であるを判断するためには、本件土地がどのようにして米軍の使用に帰したのか、米軍の使用にはどのような法的根拠があったのか、その歴史的な経過を踏まえなければならない。
① 米軍は、沖縄占領と同時に、沖縄本島在住の住民を島内十数カ所の捕虜収容所に抑留し、その間土地所有権等権利の行使を停止し、軍事上必要とされる地域を全て囲い込んで軍用地にした。これは、土地所有者の意志を全く顧みない問答無用の略奪であった。
本件土地もこのようにして地主の意志とは無関係に米軍基地にされたものである。
② 米軍は、いったん住民に返された土地についても、必要とあらば「銃剣とブルトーザー」という言葉で呼び慣されているやり方で、一方的に土地を取り上げた。
米軍による土地の強制使用は、ヘーグ陸戦法規によるものといわれるが、その実態は、同法規の定める、「私有財産尊重」、「没収・略奪の禁止」の原則に違反するものであった
③ 日本政府は、沖縄において米軍が国際法に違反して、広大な土地を強制的に地主から取り上げ、そのために、沖縄県民の生活が破壊されていることを知りながら、講話条約を結んで、沖縄の施政権を米国に委ね、米軍による沖縄の軍事的専制支配に「法的根拠」を与えた。
講和条約の発効によって、沖縄における土地の強制取り上げの法的根拠を、ヘーグ陸戦法規に求めることができなくなった米軍は、矢継早に布令、布告を乱発して、土地取り上げの法的な装いをこらした。
しかし、その実態は、土地所有者の意思を無視して土地を強制使用するという一方的、恣意的なものであった。
日本政府は、復帰前の沖縄に、潜在的憲法が適用される等と述べながら、その後、27年間に渡る、米軍事支配下に、沖縄を差出したのである。
④ 沖縄群島住民の有権者の72.2%にあたる19万9000名の反対を押し切って講和条約を締結し、沖縄を米軍に売り渡したのは日本政府であり、沖縄を犠牲にして、日本は生き残ったのである。
復帰前の沖縄の法的地位については、議論のあるところであるが、昭和40年9月7日第2回沖縄問題政府閣僚協議会は、「サンフランシスコ条約により、沖縄等の領土主権を放棄したものではなく、これに対して「潜在的主権」を有する。日本国憲法は、観念的には同地域にも施行される。」との統一見解を示している。
昭和31年6月21日民印・同年6月28日法務省発表によると、「国内法の適用上、沖縄の住民は他の日本国民と何ら差別されるところはない。」…「国家は、外国人が国内に所有する土地を収用し、または使用しようとする場合、その外国人がかかる処分によって被る損失を補うに足りる実質的補償をなすべき義務があることは確立された国際法の一般原則である」「沖縄の住民の場合は…かれらが父祖以来定住する島々に、かれらの意思にかかわりなく合衆国の施政か行われたのであって、日本政府としては在米日本人に対するよりもより以上の重大な関心をもって沖縄の住民の保護の責に任じなければならない。」
としており、日本政府は、復帰前の米軍による土地強奪に対して、日本が現実に主権を行使することが可能となった復帰時点において、まず米軍による違法な土地強奪状態を回復し、地主に対してこれを返還すべき義務を負っていたのである。
(2)復帰後の米軍事基地の強制使用
① 復帰後、日本政府は、国際法現に反して強奪された土地を取り戻して県民に返還すべき義務を負っていたのである。
沖縄県民は、基地の無い、平和な日本国憲法の下への復帰を願い、復帰闘争を闘ってきた。しかし、復帰した日本は、憲法を守り、実践するのではなく、逆に米軍用地を提供するための土地強奪を行ってきたのである。
② 1972年5月15日、「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(以下「沖縄返還協定」という。)により、沖縄の施政権は米国から日本政府に返還された。
この日以降、沖縄の米軍基地は、本土の米軍基地と同様、安保条約第6条、日米地位協定第2条によって日本政府から米国に提供されるものとなり、法的性格は名目的には、日本本土と同一になった。
③ しかし、県土面積に対して基地の占める割合、密度、その機能、規模をみるとき、基地が沖縄県民に与える影響は本土の比ではない。
「諸悪の根源」といわれる基地、その基地に復帰を迎える沖縄県民は強く反対し、その全面返還を求めた。
④ 本土復帰は、これまで沖縄県民の被った権利侵害、生活破壊を解消するものと期待した。ところか、日本政府は、沖縄返還協定第3条をもって、米軍に強奪された土地を復帰後も以前と変わりなく、継続使用することを認めた。
(3)「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法津」
① 復帰時点において、米軍に提供することになった軍用地が法的空白を持たないよう、また、自衛隊が米軍の肩代的に基地を使用することができるように「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法津」(以下「公用地法」という。)が強行採決によって制定された。
この法律は、米軍統治下における違法な土地強奪を追認するための法制であり、しかも、暫定使用期間を5年という長期間認めるものであって、憲法にも反する法律であった。
② 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地などの使用などに関する特別措置法」(以下「米軍用地収用特措法」という。)附則第2条は、日本における講和条約後の米軍基地の継続使用を可能にするための規定であるが、同規定によると、条約発効の日から90日以内に継続使用する土地等の所在、種類、数量、使用期間をその所有者に通知し、6か月を越えない限度において「一時使用」することができるとしていた。
③ 本土においては6か月の限度で一時使用を認めたにすぎないにもかかわらず、沖縄においては、5年の長期に渡って土地使用を認めるというものであって、明らかに差別的取扱であった。
また、自衛隊にも土地提供を強制し、収用手続を欠き、しかも、土地権利者の異議申立もない強制使用権を米軍ないし自衛隊に与えるものであり、防衛上の必要性を前面に出して、県民の基本的人権を無視した違憲違法な新たな土地強奪手続であった。
(4)「地籍明確化法」
① 日本政府は沖縄返還後、5年もあれば全地主と契約を締結出来ると考えていたが、1977年1月1日現在でも490名の未契約地主が存在した。
公用地法は1977年5月14日で失効するため、土地強奪を継続するために「地籍明確化法」を制定し、同法付則6項によって「公用地法」の適用期間を5年から10年に延長するとの暴挙に出た。
② 右法令の制定は「暫定使用期間」に間に合わず、同法が成立するまで4日間の「法的空白」を生じ、その間国は不法占拠を継続した。
③ 「地籍明確化法」附則第6項は実質的には土地収用法でありながら地権者の不服申立手続を認めず、当初、限時法として成立した「公用地法」の暫定使用権を当初の倍の10年に延長したものであって、適正手続保障を侵害し、適正かつ合理的な財産権の制限とは到底言えず、違憲無効な法律であった。
(5)「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(「米軍用地収用特別措法」)の適用。
① 復帰10年目を迎え、日本政府は土地強奪の根拠法として米軍用地収用特措法を適用する。
この法律が日本本土で適用されたのは1950年代であって、1961年の相模原住宅地区を最後に適用はなく、いわば冬眠状態となっていた法律であった。
それが、20年後に沖縄において適用されることになる。
右法律による強制使用対象者は153名であった。
1982年、同法により、再び5年間の強制使用が認められることになる。
その後、同法を根拠として施政権返還後今日まで、40年、以上に渡って、契約拒否地主の土地は「合法的」に強奪され続けているのである。
戦後、米軍による接収からすると、70年以上にも及び、土地強奪が続いていることになるのである。
(6)契約強制の経緯について。
① 1972年、沖縄の日本復帰に際して、軍用地主は約2万7000名存在した。
米軍による「銃剣とブルドーザー」により土地を強奪さ れた住民が賃貸借契約に応ずる理由はなく、強制収用手続きが行われていった。
② その後国は、様々な手法で、契約を強制し、基地内の一部遊休地を細切れ返還し、その際、契約拒否地主の土地だけではなく、その周辺の契約地も併せて返還するという方式をとった。返還予定の契約拒否地主と周辺の契約地主の対立をあおり、地主間の対立をあおりながら、契約拒否地主を、契約に追い込んでいったのである。
第3 普天間基地の使用継続に、「適正かつ合理的」理由はない。
1 普天間基地の形成過程
普天間飛行場は宜野湾市大山2丁目に所在しており、その面積は約4.8平方kmで、(宜野湾市野嵩・新城・上原・中原・赤道・大山・真志喜・字宜野湾・大謝名に跨る)。これは宜野湾市の面積(19.5平方km)の約25%を占めている。
アメリカ軍によって飛行場が建設される以前は、いくつかの泉を水源として、畑作が営まれる丘陵地であり、本島南部の那覇、首里と北部の国頭を結ぶ交通の要衝でもあり、琉球松の並木道が続いていたといわれている。
戦前、この地域は数集落が点在する、さつまいも等の栽培が行われていた、のどかな農村地帯であったが、1945年4月に米軍による沖縄占領と同時に接収され、米陸軍工兵隊が本土決戦に備えて滑走路を建設した。戦争が終結し、避難先や収容所からこの地へ帰郷すると、そこには昔の面影もなく、米軍の前線基地が建設され、立ち入り禁止地域になっていた。
その後は基地の周囲に張り付くように、無計画に住宅が建設され、その結果、いびつな街がつくられ、今日に至っている。
戦前は「宜野湾」、「神山」、「新城」という集落が街道沿いに存在しており、旧宜野湾は宜野湾村の中心で多くの民家が建ち並び、松並木街道沿いには郵便局、宜野湾国民学校、役場等の公共機関や商店などもあり、畑作が営まれる丘陵地には「屋取集落」と呼ばれる旧士族が開墾のため開いた散村形態の集落も分布していた。
戦争により米軍に強奪された集落である。
2 普天間飛行場に係る航空機墜落事故等の発生件数は、施政権返還以降、平成22年12月末現在で固定翼機13件、ヘリコプター75件の計88件に及ぶ。これは、県によって確認されたものに限る件数である。
平成16年8月13日には、沖縄国際大学構内に、CH-53Dヘリコプターが墜落し、乗員3名が負傷する事故が発生したが、その際、同大学の本館建物の一部や周辺の樹木等が炎上又は破損した他、近隣の住宅等にも部品が屋内を貫通し落下するなど、多大な被害を与え、民間人への被害はなかったものの、一歩間違えば甚大な被害を招きかねない深刻な事態を発生している。
普天間飛行場においては、ヘリコプター等の航空機離着陸訓練や民間地域上空での旋回訓練の実施などによって、周辺住民に深刻な騒音被害を引き起こしてる。
平成8年3月28日の日米合同委員会において、普天間飛行場に係る航空機騒音規制措置が合意されたが、普天間飛行場の周辺地域においては、依然として環境基準を超える騒音が発生している。
3 都市の中心部に位置し、広大かつ過密に存在する米軍基地は、地域の新工場の著しい障害となっているだけではなく、道路網の体系的整備ができないなど、住民生活に多大の損害を与えているほか、航空機騒音、離着陸訓練によって、市民の生命は、極めて危険な状態に置かれている。
4 1996年12月2日のSACO最終報告により、普天間飛行場の5年ないし7年以内の全面返還が日米両政府で合意された。
しかし、すでに19年を経過するにもかかわらず、普天間飛行場は返還されることなく、米軍機による住宅地上空での旋回飛行訓練は、更に激化し、県民の反対を無視するように、オスプレイまで配備され、市民の頭上での飛行訓練による騒音と墜落の不安が市民の生活環境を著しく悪化させている。
基地の沖縄県内へのたらい回しにすぎない、辺野古への県内「移設」条件付きの返還など、全く危険性除去の名にも値しない条件を強要し、沖縄県にあらたな危険の受け入れを強要し、辺野古新基地建設ができなければ、普天間返還を実行しないという、条件を振りかざし、その一方で、普天間基地用地の継続使用のための本件強制使用手続きを行なっているものである。
普天間新基地建設の強要は、強盗が、銃剣とブルドーザーで強奪した県民の土地を返してやるから、代わりに、県民の土地と海を差し出せというものであって、強奪物の交換を強要しているに過ぎない、極めて不当な要求である。
5 そもそも、普天間基地は、ラムズフェルド米国防長官が2003年に来県し、普天間飛行場を「世界で一番危険な米軍施設」と発言しているとおり、世界的にも異常な基地である。
米本国の航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)プログラムインストラクションによると軍事飛行場の運用では、CLEAR ZONEとAPZの設定があり、CLEAR ZONEは土地の利用禁止区域、APZはアクシデント・ポテンシャル・ゾーンで事故の危険性がある区域を指している。
普天間飛行場では、CLEAR ZONEとAPZが滑走路の端から4500mの範囲であるから、小学校や公共施設、大型集客施設などが利用禁止区域と事故危険性区域の範囲の中に存在することになる。
このことは日米両政府が普天間飛行場の危険性を覆い隠してきたのであり、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故は危険な運用のなかから必然的に発生したものといえる。
今後もこの米国内では許されない危険が続くことになり、このような住民の安全と生命を無視した基地運用が繰り返されることになる。
6 米本国の運用基準に違反する、極めて危険な普天間基地の継続使用を目的とした本件使用認定は、米軍用地収用特措法の適用要件である、「適正かつ合理的」の要件を欠くことは明らかであり、強制使用手続をもって、普天間基地の継続使用を行うのではなく、直ちに運用を停止し、普天間基地を閉鎖すべきである。
第4 土地利用の障害たる米軍基地
1 沖縄は、全国との比較で人口1%弱、県土面積にいたっては0.6%弱である。この沖縄に専用施設でいえば実に74.84%の基地が存在する。
米軍基地は、沖縄全県の11.3%を占め、沖縄本島での比率は20.12%、中部地域にあっては、実に27.00%の面積が基地になっている。
基地あるが故に、県民全体の福祉増進につながる健全な地域開発と産業の発展が大きく阻害されている。
2 県民の生活と人権を破壊する米軍基地
基地あるが故に健全な地域開発が歪められているだけではない。広大な米軍基地があるゆえに沖縄県民は、日常生活の上で、言い知れぬ多大の被害を蒙っている。
嘉手納飛行場、普天間飛行場、伊江島射爆場は住宅地域や小・中・高校などの教育施設に近接しており、そのため地域住民や児童・生徒は、常時、90ホン、100ホンを超える騒音に悩まされている。地域環境は破壊され、地域住民の健康はもとより、成長途上の子供たちの精神的、肉体的な発育、向上は、著しく阻害されている。
銃弾乱射事件、森林の火災事件など、住民の反対を押し切って、毎日のように繰り返される演習による被害は、枚挙にいとまがない。そればかりではない。基地からの廃油廃液、パイプラインによる漏油事件、米軍機墜落事故等による住民の日常的な不安は、もはや度し難い状況にある。米軍人、軍属による県民への犯罪の多発、近年とみに激増している麻薬犯罪は、県民の生命、健康に対する直接的な脅威とさえなっている。
3 沖縄は、去る大戦において、本土防衛の名の下に、子供・婦人などの非戦闘員を含む約18万人の県民の尊い命を失った。当時の沖縄県の人口の3分の1を超える家族を失い、荒廃と混乱と失意のなかにあった沖縄県民を待ち受けていたものは、米軍による軍事優先と植民地的専制支配であった。
それは日本政府自らの沖縄政策によるものであった。そしていまなお、この沖縄に広大な軍事基地(米軍・自衛隊基地)が大きくのしかかっている。
4 普天間基地返還の条件として、辺野古に新基地建設を建設し提供することを求め、国は、海上保安庁に止まらず、自衛隊戦艦までを投入して工事強行を図ろうとしている。まさに、日本政府による「銃剣とブルドーザー」による、沖縄県民の土地と海の強奪にほかならない。
5 世界一危険な空港であることを口実にして、県民に新たな犠牲を強いることは、決して許されることではない。
普天間基地の継続使用を停止し、普天間基地を閉鎖することこそが、普天間基地の危険除去のための唯一の方法である。
本件使用認定は、世界一危険な普天間基地の継続使用を目的とするものであって、到底許されるものではない。
第7 結論
以上述べてきたように、本件土地について、米軍用地収用特措法を適用して強制使用することは違法であるだけでなく、強制的に軍事基地に供することは、土地強制使用の要件として、米軍用地収用特措法が定める「適正且つ合理的」の要件を欠くものであるとともに、平和主義を定めた憲法前文、第9条及び私有財産権の尊重を定めた憲法第29条、権利制限の適正手続を定めた憲法第31条に違反するものである。
「安保の基地提供義務」を口実に、原告らの本件土地をさらに今後とも奪い続けようとすることはいかなる意味においても違法である。
よって、本件訴えに及ぶ次第である。
添付書類
1 訴訟委任状 111通
2 不動産全部事項証明書 1通
3 土地固定資産評価証明書 1通
4 住民票 20通
5 戸籍の附票 3通
4 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法による使用の認定について(通知)(写し) 1通
5 訴状副本 1通
6 上申書 1通