和解の問題は、9項 ではなく 6項 にある。
本年3月4日、国の沖縄県に対する執行命令訴訟について和解が成立し、
1ヶ月を経過した。
この間、辺野古新基地建設反対派からも、和解条項9項によって、沖縄県は、是正の指示判決の結果にすべてを任せ、県がその判決で負けてしまえば、新基地建設を阻止できなくなってしまうとの見解が主張されている。
ここで、気をつけなければならないのは、同じ主張を国は、和解直後から繰り返し、、世論操作を繰り返している点であり、これを見落としてはならない。
反対派の中から、このような意見が生じてしまうのは、そもそも、訴訟の進め方も、和解の進め方も、県議会にも公開されないまま進められたことに原因している。
そのような進め方が、反対派の一部に、誤解と不信を与えていることを否定することはできない。
私たちは、辺野古基地建設反対の県を支えるが、県に辺野古の運命をゆだねたわけではない、辺野古基地建設反対は、市民の中で、強固なものとしてあり、判決の帰趨にかかわらず、受け入れることできない。
辺野古基地建設の可否は、そもそも、自己決定権、地方自治の実現であり、民主主義の基本である。
沖縄県民が判断し、選択した結果を、少数の裁判官の判断によって覆すことが出来るのか。、民主主義、地方自治の根本を、裁判官によって覆すことができるのか。
執行訴訟を維持すると、国が負けてしまうから、国は和解を選択した等の議論もあるが無意味な議論だとかんがえる。
この裁判の基本は、本来、法律論の空中戦を求めるものではなく、県民が自ら選択した判断を、国によって押しつぶすことができるのかという、きわめて基本的な価値観、住民自治、自己決定権が争いの根本であり、空中戦は、問題の本質を、矮小化させることになり、県民から離れた裁判になってしまう。
議論されている、9項についても、その可否を議論すること事態、県と国との対立軸を見失った議論であり、空中戦に乗っかかった議論にすぎない。
裁判上の和解は、訴訟物を前提として行われるものであり、「埋立承認取消」の是非を巡って争われた裁判における和解であって、和解の効力もその範囲で効力を有するにすぎない。
仮に国地方係争委員会を経過しての是正の指示の取消訴訟の結果に従うとしてもそれは、「埋立承認取消」の限度にすぎない。
沖縄防衛局は、今後、実施設計を行い、美謝川の付け替えを行うなど、設計変更を繰り返さなければならない、。
岩国基地埋立では、7回の設計変更が繰り返されたのであり、辺野古新基地建設においても、同様の設計変更がなされることは、予測に難くない。
その際、9項によって、設計変更に同意しなければならないといった拘束力をもたせることは出来ない。
個別設計変更 によって、環境破壊、被害が生じることが明らかであるにもかかわらず、これをを受忍して、受け入れろといった和解が、裁判所によって強制されることなどあり得ない。仮に裁判所がそのような認識であったとしても、司法の限界として、これを越える拘束は、できない。
ただ、今後、9項について、そのような議論がなされることをとらえて、「辺野古推進派」は、県知事が受け入れたのだから、その後の反対は出来ないと、すべての責任を翁長知事になすりつけて、辺野古新基地建設問題を終わったものと称して、基地建設を進める口実にすることは容易に考えられる。
県民が、辺野古新基地建設を阻止するためには、翁長知事が辺野古新基地建設反対を貫き通せるよう、圧倒的な反対派県議を県議会に送り出すこと、参議院選で、伊波さんを勝たせること、現場の闘いを継続すること、名護市長を全力で支えることがが必要である。
国地方係争委員会、裁判所に対する信頼をおくことが出来ない以上、、民主主義、地方自治の理念を自らの手で、あらゆる手段を通じて、アメリカと国に建設を断念させる、粘り強い、継続した闘いが必要である。
裁判は、闘いの一部にすぎない。現場の闘いと、裁判闘争は、本来、車の両輪であり、いずれか一つがかけても闘いは成り立たない。
その意味で、裁判闘争が、県民の闘いとコミットしていなことに、不信感が生まれる原因があると考える。
今回の和解の問題点は、9項ではなく、6項にあると考える。
和解案6項は、
同委員会が是正の指示が違法であると判断した場合に、その勧告に定め られた期間に原告が勧告に応じた措置を取らないときは、被告は、その 期間が経過した日から1週間以内に同法251条の5第1項4号所定の 是正の指示の取消訴訟を提起する。」と定めている。
法文上の立て付けは同様の定めがあったとしても、国は、国地方係争処理委員会の「是正の指示」があっても、これに従わないことが和解の上で、当然に予定され、その場合にも、県が国を相手に裁判を起こさなければならないことになっている。
執行訴訟は、国が県に対して、裁判所を使って、権力的に基地建設を強制しようとしているという、非常にわかりやすく、事実関係を反映する訴訟であり、国際的にも、米軍基地建設を強行するために、日本政府は、天皇メッセージによって、戦後、長期にわたって、米軍事支配に売り渡してきた沖縄に対して、再び基地を強制するため、沖縄に対する抑圧をおこなっているという実態が明確にされる裁判だった。
ところが、国地方紛争処理委員会が関与しこれに対する裁判は、「是正の指示」が出ない場合に、沖縄県が訴訟を提起することはやむを得ないとしても「是正の指示」が出ても国が受け入れなければ、県が国を相手に裁判を起こすとの手段が明記されている。
国は、「是正の指示」を受けてもこれを無視すればよく、県が裁判を提起しなければならないというのである。
国の違法行為に対して、県が抵抗しなければならない
裁判の形態としては、国に対して、県が抵抗しています。との外形をもった訴訟が行われる。
国が沖縄県を痛めつけているという実態を体裁良く回避し、すべての責任を沖縄県に負わせているのである。
地方が応じない場合、国からの違法確認訴訟の形態が予定されているが、国が原告になって県を威圧するとの訴訟形態を回避し、いずれの場合も、県が国に対して「抗っている」といった訴訟形態を選択させているのである。
地方自治法 第二百五十一条の七で定める、国から県に対する違法確認訴訟の道は、選択されていないのである。
国による沖縄に対する差別的取り扱い、司法まで動員しての沖縄に対する強制の実態を隠蔽する訴訟構造を押しつけたのである。
しかも、裁判の提起まで、地方自治法では、「是正の指示から30日以内」であるのに和解では、1週間とされている。
この和解は、決して、裁判所の中立性を意味するものでも、公平性を意味するものでもない。
しかし、その和解内容を、国が意図的に曲解してマスコミを通じて流し続ける、「埋立承認取消に関連する訴訟で、すべてが終わる」などといった、宣伝に惑わされないで、辺野古新基地建設反対の意思と運動を強固に固めなければならない。
工事の中断中、高江に対する攻撃が陰湿に始まっている。
辺野古と高江は一体である。どちらも負けてはならないし、勝利は、闘う市民の側にある。
」
行政不服審査法に基づく執行停止は取り消され、現在、埋立承認が取り消された状態にある。
であれば、工事を前提とした、臨時制限海域は、当然に取り消されるべきであり、フロートも撤去すべきである。
スパット台船も退去すべきである。
昨日も、海域をカヌーで航行した男性が、軍警によって不当に身柄を拘束された。
沖縄県は、毅然とした態度で、原状回復を求めるべきである。
9項を政府と一体となって沖縄に強制しようとする勢力に負けてはならない。
翁長県政を支える県議を多数県議会に送り出して、盤石なものとし、参議院選挙には、
伊波さんの勝利をもって、県民意思をしっかりと、世界に届けなければならない。
和 解 条 項
1 当庁平成27年(行ケ)第3号事件原告(以下「原告」という。)は同事件を、同平成28年(行ケ)第1号事件原告(以下「被告」という。)は同事件をそれぞれ取り下げ、各事件の被告は同取下げに同意する。
2 利害関係人沖縄防衛局長(以下「利害関係人」という。)は、被告に対する行政不服審査法に基づく審査請求(平成27年10月13日付け沖防第4514号)及び執行停止申立(同第4515号)を取り下げる。利害関係人は、埋立工事を直ちに中止する。
3 原告は被告に対し、本件の埋立承認取消に対する地方自治法245条の7所定の是正の指示をし、被告は、これに不服があれば指示があった日から1週間以内に同法250条の13第1項所定の国地方係争処理委員会への審査申出を行う。
4 原告と被告は、同委員会に対し、迅速な審理判断がされるよう上申するとともに、両者は、同委員会が迅速な審理判断を行えるよう全面的に協力する。
5 同委員会が是正の指示を違法でないと判断した場合に、被告に不服があれば、被告は、審査結果の通知があった日から1週間以内に同法251条の5第1項1号所定の是正の指示の取消訴訟を提起する。
6 同委員会が是正の指示が違法であると判断した場合に、その勧告に定められた期間に原告が勧告に応じた措置を取らないときは、被告は、その期間が経過した日から1週間以内に同法251条の5第1項4号所定の是正の指示の取消訴訟を提起する。
7 原告と被告は、是正の指示の取消訴訟の受訴裁判所が迅速な審理判断を行なえるよう全面的に協力する。
8 原告及び利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定まで普天間飛行場の返還及び本件埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う。
9 原告及び利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する。
10 訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。