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2015年06月13日

「埋立承認取消、撤回」を停止することはできない。

県知事の「公有水面埋立承認取消撤回」に対して、
    行政不服審査法の適用は不可能である。

第1 前提
1 沖縄県知事が、「岩礁破砕許可」の取消を視野になされた、業 務停止指示に対して、沖縄防衛局は、岩礁破砕は、民間と同じ、 「一事業者」」としての行為であるとして、行政不服審査法にも とづく審査請求とともに、執行停止申立を行い、農水省は、直ち に、その執行を停止した。
2 沖縄県知事が、「公有水面埋立承認の取消、撤回」を行った場 合にも、「岩礁破砕と同様、国は、直ちに「行政不服審査法」に 基づいて、執行停止申立を行い、 その執行を停止することが可 能であって、「取消、撤回」をしても、工事は、停止することな く進行するとの考えがある。
しかし、これは、明らかに誤りである。
3 まず、行政不服審査法は、第1条で同法の目的を定め、
「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行 為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを 開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済 を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とす  る。」と定めており、国の機関が申立人になることを予定してい ない。
4 100歩譲って、一事業者として行う業務については、同法の 適用がありうるとの考え方にたったとしても、公有水面埋立法上 の国の権限に関する規制は、国民の行う埋立行為とは明らかに異 なっている。
「一事業者」というためには、「民間事業者」と同一の規制の 下におかれ、同一の要件に基づいて規制されていることを前提と するものである。
5 公有水面埋立法に基づく、一般事業者による埋立行為と、国の 行う埋立行為の差異について、国は次ぎの通り主張している。
沖縄県を被告として、埋立承認取消請求訴訟を提起した際、国 は、沖縄県=仲井真前知事を支えるため、国から代理人を送り出 してきた。その際、沖縄県=仲井真前知事は、次ぎの通りの内容 の書面を裁判所に提出している。
名義人は、沖縄県であるが、実際の作成者は、国である。
6 翁長知事が知事選に勝利したのち、国は、沖縄県の代理人を引 き上げ、沖縄県が埋立承認を取り消されると、埋立に影響をうけ るとして、沖縄県とは独立して、「訴訟参加」をおこなった。
  沖縄県の埋立承認を取り消させるなとの立場で、訴訟に関与し てきたものである。
  参加に当たって、国は、従前の主張に対する態度を示さないま ま、「訴訟参加」を行っている。
  従前の県主張に従えば、「一事業者」として、「行政不服審査 法」に基づく請求は、不可能であるということになる。

第2 従前沖縄県=仲井真前知事 が主張している埋立承認の効力  について。
(1)沖縄県は、国と共同歩調をとっていた当初訴訟において、埋  立承認の効力に対して以下の通りの主張を展開している。
 ① 公有水面は国の直接の公法的支配権に服するものであるか   ら、これを埋め立てるに当たって、都道府県知事の免許を必   要としない。
   ⅰ 国以外の者がなす埋立の場合と異なって、埋立を為すた    めに、特に「埋立を為す権利」を取得する必要はない。
   ⅱ 公有水面は、公共用物であり、国の直接の法的支配管理    に服するものであるから、公有水面を埋め立てるかどうか    は、本来国の判断にゆだねられるべきものである。
 それゆえ、国が公有水面を埋め立てる場合には、公有水    面の管理支配を有しない国以外の者がこれを埋め立てる場    合とは異なり、免許により埋立権の設定を受けることを要    しない。
  ② 法42条1項の承認は行政機関相互の内部関係である。
ⅰ 公有水面埋立法第42条1項が国において公有水面を     埋め立てる場合に、都道府県知事の承認を要件とした趣     旨は、「公有水面埋立法51条1項、地方自治法2条9     項1号により第1号法定受諾事務として都道府県がこれ     を管理するものであり、法は、国が公有水面埋立を行う     場合であっても当該埋立によって公有水面の管理上何ら     かの支障を生じるものであるか否かを、現に公有水面の     管理を行っている都道府県の判断を尊重し、その承認を     経させることとした趣旨である。」
  ③ 承認を行わない場合、国は、公益の調整という観点から都   道府県知事との話し合いによってこれを解決することになる   が、話会いによる解決が出来ず、都道府県知事が法令に違反   して不承認をしようとする場合には、
a 地方自治法245条の7に基づく国の都道府県知事に対    する是正の指示
b 地方自治法250条の13以下の国地方係争処理委員会    による審査。
または、
   c 地方自治法第247条の8に基づく国による代執行など    の紛争解決手段が予定されている。
d 法及び地方自治法が都道府県知事の不承認を抗告訴訟に    よって争わせるとの立法政策をとっていない。
  ④ 埋立承認は、外部に対する効力を有しない。
ⅰ 国は本来公有水面に対する支配権を有しており、この支    配権について埋立を行う権利を有しているのであり、県知    事の承認は、国による埋立について、都道府県知事との管    理上の調整の観点から行われるにすぎず、国の行う埋立に    よって、漁業権者等の権利利益が侵害されるのは、国がそ    もそも有している埋立を行う権限の行使によるものであっ    て、同項に基づく、承認の効力によるものではない。
 (2)以上の主張は、原告らの埋立承認取消請求を排斥する根拠   として主張されるものであるが、埋立承認がもつ法的効力、   従って、埋立承認の取消,撤回に関する法的効力についても   極めて重要な主張事項であると考える。

第3 埋立承認の法的効力評価の重要性 
 (1)埋立承認が法定受諾事務であったとしても、沖縄県が、そ   の承認を、自庁取消、自庁撤回を為した場合、前記承認に関   する法的効力に関する評価は、当然に取消、撤回を争う際の   効力、手続きに反映されることになる。
    沖縄県の前記主張に基づけば、沖縄県が自庁取消、撤回を   行った際にも、国は、これに対して、一事業者と同様に、抗   告訴訟ないし、行政不服審査法に基づく審査請求はできない   のであって、地方分権一括化法に基づいて改変された地方自   治法245条の7以下の各条項に基づいて、その取消の効力   を争わなければならないということになる。
(2)ところが、本件訴訟参加において、国は自ら得ている「埋   立承認」の効力を明確にしないまま、単に、「同条項に基づ   く承認を受けて、上記工事を行う参加人の権利ないし法律上   の利益が害される」と主張し、国が埋立承認によって得た権   利の法的性質、法的効力に対して、全く言及せず、あたかも   土砂を搬入して埋立行為「裸の埋立行為」が出来なくなると   の主張をしているにすぎないかのような仮装を行っている。
(5)国は、訴訟参加に当たって、埋立承認の効力及び、埋立承   認によって得た国の権限について明確にすべきである。
    上記の通りの、沖縄県の主張を援用するのか明確にすべき   である。
    独自の主張をするのであれば、埋立承認の効力及び、それ   を争う手段についての沖縄県の見解と異なるとする見解を園   根拠を含めて、早急に明確に主張すべきである。
4 国は当事者参加する以上、自らの権利を法的に明確にすべき  であり、その整理がなされなければ、原告らは明確な訴訟対象  を特定することができず、国は単に、訴訟遅延を図る目的っで  本件訴訟に参加したにすぎないと言わざるを得ない。

第3 国の主張の欺瞞性
1 国は、公有水面埋立承認に関して、沖縄県をして、前述の通  りの主張をさせておきながら、その一方で、埋立行為の前提と  して行われる「沖縄県漁業調整規則」に基づく前県知事の岩礁  破砕許可に対して、許可条件違反があるとして、現県知事が求  めた「作業停止指示」及び、「岩礁破砕許可取消」に関して、  国の行う破砕行為も、「一事業者としての行為」と同一であっ  て、「国民」と同質の行為であり、救済の対象となるとして、  「行政不服審査法」に基づく審査請求および執行停止申立を行  った。
   これを受けた農水大臣は、間髪をいれず、作業停止指示の、  執行停止決定をおこなった。
2 行政不服審査法は、明文をもって明確に、審査請求者を「国  民」と限定しているにもかかわらず、「国も一事業者」である  との詭弁を用いて、マッチポンプさながらに執行停止決定を行  い、大浦湾の自然環境に対する破壊的なボーリング調査を継続  させている。
3 沖縄県は、前述のとおり、埋立承認が、一般国民が行う際の  「埋立同意」と国が行う際の「承認」が異質のものであると明  確に主張し、その抗争手段についても明確にこれを示している。
   原告らは、その主張を是認するものではないが、少なくとも  沖縄県の見解からすれば、埋立承認の効力を国と県とが争う手  段は、地方自治法245条の7以下の手続きに基づくものとな  るのであって、抗告訴訟あるいは行政不服審査法に基づく申立
は不可能であるということになる。
3 しかし国は、公有水面埋立の前提としての岩礁破砕行為につ  いて、「国も一事業者」であるとの主張をもって、行政不服審  査法にもとづく前記申立をおこなっている。
4 このような主張がまかり通るのであれば、公有水面埋立行為  そのものも、「一事業者」として行政不服審査法に基づく、審  査請求あるいは、執行停止申立が可能となるということになる  のであって、埋立承認あるいは、埋立承認取消の効果を,国自  らの機関によって容易にこれを取消、あるいは執行停止が可能  ということになってします。
5 国の立場について、「一事業者」であるとの立場と、「許可  を要しない公法的権利者」であるとのとの立場を都合よく使い  分けることは、法的統一性、法的安定性も無視するものであり、  自己に有利な法解釈にもって法を悪用濫用し、自らの不当な権  利を推し進めるものであり、裁判の否定である。
かような法解釈は、国家権力による法の支配の否定である。
6 本件訴訟において、国が主張する「参加人の権利ないし法律  上の利益」がいかなる権利であるのかを明確にすることは、参  加人の主張の前提としても、不可欠である。
 7 前記、岩礁破砕行為の停止を求める県知事の行為に対して行  われた行政不服審査法に基づく執行停止及び審査請求に関して、  国は、一事業者として行為であり、国民と同一の申請適格があ  ると強弁しており、かような異常な国の対応から、公有水面埋  立承認に基づく、埋立行為についても「一事業者」として、行  政不服審査法にもとづき、国民と同一の申請適格があるとの主  張を国がおこなうのではないかとの疑念をもつ行政法学者すら  存在事態が生じているのである。
8 しかし、かような対応は、明らかに、国が県をして言わしめ  た前述の「承認」に関する主張とは矛盾する主張である。
国は、明確に、自らの主張する権利の権利性、権利の法的性  格を明確にすべきであり、沖縄県の前述の援用する趣旨か否か  、援用しないのであれば、国の主張する埋立承認に基づく権利  の権利性等について明確にする必要がある。
9 ご都合主義的な主張をもって、場当り的に権利の性格を変更  して主張することは、決して許されないというべきである。 
「埋立承認取消、撤回」を停止することはできない。



Posted by しゅんさん at 09:23│Comments(0)
 
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