
2017年03月23日
警察官の証言に遮へいを行う事に対する反対意見
証人尋問における遮へい申立に対する弁護人意見
(証人警察官について)
2017年3月21日
那覇地方裁判所刑事部 御中
弁護人
第1 弁護人の意見
1 遮へいは不当であり、裁判所は、遮へいの措置をとる決定を すべきではない。
第2 理由
1 刑事訴訟法第157条の3 1項、同2項は、検察官から遮 へい措置の申立があれば、裁判所は、当然に遮へいの処分を行 うべきことをさだめるものではない。
遮へいの処分は、裁判所の処分として行われるものであり、
裁判所は、その必要性を慎重に判断することが不可欠である。
2 今回の検察官の請求は、被告人、傍聴席いずれからも遮へい を求めるというものであり、「証人が、被告人から威迫をうけ、 精神の平穏を著しく害されるおそれがある。」ことから、被告 人との間に遮へいの措置を求め、「名誉に対する影響等の事情 があるから」傍聴席との間に遮へいの措置を求めるというもの であると考えられる。
3 しかし、そもそも遮へいの措置は、裁判公開の観点や、被告 人の弁護権行使に対して重大な影響を及ぼすのみならず、裁判 官、傍聴人に対して、被告人の悪意性を強く印象付ける効果を 生じることになり、被告人に対する予断と偏見を助長するもの であって、その扱いは、極めて慎重であるべきである。
証人保護の観点から、裁判所は容易に遮へいの措置をとる傾 向がみられ、今回の検察官の遮へい申立についても、検察官が 申し立てれば、裁判所は、当然にこれを採用するとでもいうよ うな、何らの具体的な必要性に関する記載はなく、条文をその まま引用して遮へいをもとめるという、極めて横柄で、いい加 減で、無内容な申請書である。
まるで、検察官が申請すれば、当然に裁判所は処分権を行使 するとでもいった態度である。
4 本件申請書には、具体的に警察官である警察官が、警察官 として職務上知り得た知見を公開の法廷で証言することにより、 「被告人から、如何なる威迫を受け」、如何に、「精神の平穏 を著しく害されるおそれがある」のかについては、全くその記 載がない。また、傍聴人から、いかなる「名誉を侵害され等」 の恐れがあるのかすらも何らの記載もない。
5 そもそも、検察官の申立は、弁護人の反論の余地すらない、 極めて教条的な、刑訴法第157条の3 1項、同2項をその ままコピーして記載したにすぎない、異常な申立書である。
6 証人警察官は、警察官であり、「沖縄県警本部警備部警備 第1課司法警察員警部補」である。
警備部とは、警視庁及び各道府県警察本部に共通に置かれて いる部署であり、警備警察、公安警察を担当する部署である。 道府県警察本部の警備部は、警備課、機動隊、公安課、外事 課が設置されている。
沖縄県警ホームページに掲載された「警備部」の説明による と、
「警護、テロ・ゲリラの撲滅、外国人犯罪の取り締まり、災害 救助で活躍するのが警備警察です。
皇族の護衛、国内外の要人の警護をはじめ、国の治安を大き く揺るがす無差別なテロ・ゲリラの撲滅、 国際化に伴い増加 の傾向を高める密航等出入国管理に関する犯罪の捜査、そして 災害時の救助活動に携わっています。
濃紺のヘルメットと服をまとい、ジュラルミンの盾を手に整 然とデモの整理に当たる機動隊員は警備警察の大きな担い手で す」
と記載し、ジュラルミンの盾を持った機動隊委員の写真が掲載 されている。
かような業務に従事する警察官が、公務上知り得た知見を もって法廷に立ち、被告人らの有罪立証を行うための証言を行 うに際して、「精神の平穏を著しく害されるおそれがある」と か、「名誉を侵害される等」のおそれがあるなどということは あり得ないのである。
7 証人警察官は、申請された甲第4号証捜査報告書を作成し ているが、同書面のなかの、ビデオの1本は、警察官秀治自ら が撮影したビデオテープが入っており、同ビデオの撮影時の肩 書きは、「公安捜査隊員(沖縄県名護警察署派遣)、沖縄県警 本部警備部警備部警備第一課」との記載がなされている。
8 さらに、遮へいの措置を求めるとしながら、同捜査報告書1 94丁には、警察官秀治自らの姿を撮影した写真が貼付されて おり、「第5ゲートで警戒中の本職(沖縄県警察本部警備部警 備第1課司法警察員警部補警察官)との記載がある。
同写真に撮影されている警察官秀治は、「マスクをし、サン グラスらしき眼鏡をつけ、警察のキャップをかぶり、」公務執 行であるにも関わらず、顔を隠して住民に対峙している姿が映 っている。
市民に対しては、執拗にビデオを撮り続けて、プライバシー の侵害を繰り返しながら、国家権力を背景とし、逮捕権をちら つかせながら住民と対峙する警察官は、マスクと眼鏡と帽子で 顔を隠し、県警の腕章のみをもって、警察官であると称して、 住民と対峙している。
同写真は、2016年1月28日の行為であるが、少なくと もその後、警察官秀治が市民から威圧を加えられたり、脅迫を 加えられたりしたといった事実はない。
9 また、同人は、辺野古キャンプシュワブだけではなく、検察 官申請の甲110号証にも係わっており、高江における公務執 行妨害事件にも関与している警察官である。
警察官秀治は、警察公務員として知り得た知見を公開の法廷 で証言するというのであり、刑訴法の定める遮へい措置を講じ るべき理由は全く存在しない。
そもそも検察官の遮へいの措置の申立には、何らの根拠も示 されていない。
仮に遮へいをして、容姿を明らかにしないで証言をさせろと いうのであれば、その目的は、現場において、マスク、サング ラス、帽子で容貌を隠して採証活動と称するビデオ撮影を繰り 返していたと同様に、秘密性を有する「公安捜査隊員」である から、公判廷においても、その容姿を秘匿し、市民に容姿がば れないようにしてくださいと主張している以外のなにものでも ない。
10 遮へいの措置は、裁判所による職権による処分である。
仮に、同人に対して遮へいの措置を認めるという事態となれ ば、弾圧現場で、サングラスとマスクと帽子で顔を隠し、市民 弾圧を繰り返すと同じように、裁判所が警備警察官を遮へいに よって隠蔽し、その証言に対する責任を持つことなく、証言を させることを保護するに等しい暴挙であるといわざるを得ない。 11 従前、警察官に遮へいの措置がなされた事実は皆無である。 仮に本件においてこれが認められるというのであれば、公務 員は、国家権力を背景としてどのような行為を行ったとしても、 また、裁判所においてどのような証言をしようとも、姿を隠し て権力の行使が可能であるということを容認することになる。
12 本件において、警備警察官の遮へいによる証言を認めるとい うことは、日本の刑事司法の崩壊を意味する重大な事態である というべきであり、このような請求をする検察官は、まさに、 日本の民主主義を崩壊させ、警察国家に道を開く極めて危険な 申立を行っていることを自覚すべきである。


(証人警察官について)
2017年3月21日
那覇地方裁判所刑事部 御中
弁護人
第1 弁護人の意見
1 遮へいは不当であり、裁判所は、遮へいの措置をとる決定を すべきではない。
第2 理由
1 刑事訴訟法第157条の3 1項、同2項は、検察官から遮 へい措置の申立があれば、裁判所は、当然に遮へいの処分を行 うべきことをさだめるものではない。
遮へいの処分は、裁判所の処分として行われるものであり、
裁判所は、その必要性を慎重に判断することが不可欠である。
2 今回の検察官の請求は、被告人、傍聴席いずれからも遮へい を求めるというものであり、「証人が、被告人から威迫をうけ、 精神の平穏を著しく害されるおそれがある。」ことから、被告 人との間に遮へいの措置を求め、「名誉に対する影響等の事情 があるから」傍聴席との間に遮へいの措置を求めるというもの であると考えられる。
3 しかし、そもそも遮へいの措置は、裁判公開の観点や、被告 人の弁護権行使に対して重大な影響を及ぼすのみならず、裁判 官、傍聴人に対して、被告人の悪意性を強く印象付ける効果を 生じることになり、被告人に対する予断と偏見を助長するもの であって、その扱いは、極めて慎重であるべきである。
証人保護の観点から、裁判所は容易に遮へいの措置をとる傾 向がみられ、今回の検察官の遮へい申立についても、検察官が 申し立てれば、裁判所は、当然にこれを採用するとでもいうよ うな、何らの具体的な必要性に関する記載はなく、条文をその まま引用して遮へいをもとめるという、極めて横柄で、いい加 減で、無内容な申請書である。
まるで、検察官が申請すれば、当然に裁判所は処分権を行使 するとでもいった態度である。
4 本件申請書には、具体的に警察官である警察官が、警察官 として職務上知り得た知見を公開の法廷で証言することにより、 「被告人から、如何なる威迫を受け」、如何に、「精神の平穏 を著しく害されるおそれがある」のかについては、全くその記 載がない。また、傍聴人から、いかなる「名誉を侵害され等」 の恐れがあるのかすらも何らの記載もない。
5 そもそも、検察官の申立は、弁護人の反論の余地すらない、 極めて教条的な、刑訴法第157条の3 1項、同2項をその ままコピーして記載したにすぎない、異常な申立書である。
6 証人警察官は、警察官であり、「沖縄県警本部警備部警備 第1課司法警察員警部補」である。
警備部とは、警視庁及び各道府県警察本部に共通に置かれて いる部署であり、警備警察、公安警察を担当する部署である。 道府県警察本部の警備部は、警備課、機動隊、公安課、外事 課が設置されている。
沖縄県警ホームページに掲載された「警備部」の説明による と、
「警護、テロ・ゲリラの撲滅、外国人犯罪の取り締まり、災害 救助で活躍するのが警備警察です。
皇族の護衛、国内外の要人の警護をはじめ、国の治安を大き く揺るがす無差別なテロ・ゲリラの撲滅、 国際化に伴い増加 の傾向を高める密航等出入国管理に関する犯罪の捜査、そして 災害時の救助活動に携わっています。
濃紺のヘルメットと服をまとい、ジュラルミンの盾を手に整 然とデモの整理に当たる機動隊員は警備警察の大きな担い手で す」
と記載し、ジュラルミンの盾を持った機動隊委員の写真が掲載 されている。
かような業務に従事する警察官が、公務上知り得た知見を もって法廷に立ち、被告人らの有罪立証を行うための証言を行 うに際して、「精神の平穏を著しく害されるおそれがある」と か、「名誉を侵害される等」のおそれがあるなどということは あり得ないのである。
7 証人警察官は、申請された甲第4号証捜査報告書を作成し ているが、同書面のなかの、ビデオの1本は、警察官秀治自ら が撮影したビデオテープが入っており、同ビデオの撮影時の肩 書きは、「公安捜査隊員(沖縄県名護警察署派遣)、沖縄県警 本部警備部警備部警備第一課」との記載がなされている。
8 さらに、遮へいの措置を求めるとしながら、同捜査報告書1 94丁には、警察官秀治自らの姿を撮影した写真が貼付されて おり、「第5ゲートで警戒中の本職(沖縄県警察本部警備部警 備第1課司法警察員警部補警察官)との記載がある。
同写真に撮影されている警察官秀治は、「マスクをし、サン グラスらしき眼鏡をつけ、警察のキャップをかぶり、」公務執 行であるにも関わらず、顔を隠して住民に対峙している姿が映 っている。
市民に対しては、執拗にビデオを撮り続けて、プライバシー の侵害を繰り返しながら、国家権力を背景とし、逮捕権をちら つかせながら住民と対峙する警察官は、マスクと眼鏡と帽子で 顔を隠し、県警の腕章のみをもって、警察官であると称して、 住民と対峙している。
同写真は、2016年1月28日の行為であるが、少なくと もその後、警察官秀治が市民から威圧を加えられたり、脅迫を 加えられたりしたといった事実はない。
9 また、同人は、辺野古キャンプシュワブだけではなく、検察 官申請の甲110号証にも係わっており、高江における公務執 行妨害事件にも関与している警察官である。
警察官秀治は、警察公務員として知り得た知見を公開の法廷 で証言するというのであり、刑訴法の定める遮へい措置を講じ るべき理由は全く存在しない。
そもそも検察官の遮へいの措置の申立には、何らの根拠も示 されていない。
仮に遮へいをして、容姿を明らかにしないで証言をさせろと いうのであれば、その目的は、現場において、マスク、サング ラス、帽子で容貌を隠して採証活動と称するビデオ撮影を繰り 返していたと同様に、秘密性を有する「公安捜査隊員」である から、公判廷においても、その容姿を秘匿し、市民に容姿がば れないようにしてくださいと主張している以外のなにものでも ない。
10 遮へいの措置は、裁判所による職権による処分である。
仮に、同人に対して遮へいの措置を認めるという事態となれ ば、弾圧現場で、サングラスとマスクと帽子で顔を隠し、市民 弾圧を繰り返すと同じように、裁判所が警備警察官を遮へいに よって隠蔽し、その証言に対する責任を持つことなく、証言を させることを保護するに等しい暴挙であるといわざるを得ない。 11 従前、警察官に遮へいの措置がなされた事実は皆無である。 仮に本件においてこれが認められるというのであれば、公務 員は、国家権力を背景としてどのような行為を行ったとしても、 また、裁判所においてどのような証言をしようとも、姿を隠し て権力の行使が可能であるということを容認することになる。
12 本件において、警備警察官の遮へいによる証言を認めるとい うことは、日本の刑事司法の崩壊を意味する重大な事態である というべきであり、このような請求をする検察官は、まさに、 日本の民主主義を崩壊させ、警察国家に道を開く極めて危険な 申立を行っていることを自覚すべきである。


Posted by しゅんさん at 19:20│Comments(0)